くろやん☆ワールド

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災害時の鉄道の計画運休の導入は、働き方改革の一つのだと考えるべき

どうも!オーストラリアにワーホリ中のくろやんです!

 

本日台風が関東地方を直撃し大きな被害を出しました。皆さんの住んでいる場所は大丈夫でしたでしょうか。

 

台風などの大きな被害が予想される際に話題になるのが鉄道などの公共交通機関の運行情報。

 

とにかく首都圏は鉄道インフラがヒトの移動の根幹を支えており、ひと度運転を見合わせると大混乱が起きます。

 

最近になって鉄道各社はこうした急な運転見合わせによる混乱を避けるため、計画運休をするようになりました。

 

計画運休が行われる度に駅では混乱が起こり話題になります。

 

news.yahoo.co.jp

今回の台風15号でも様々な観点から話題にあがります

 

 

 

しかし、この計画運休が一定の効果をあげているのは確かです。

 

そしてこの計画運休は日本人の働き方を問う一つのキーワードだと考えます。働き方改革が叫ばれて久しいですが、鉄道会社の計画運休は日本人の働き方改革に一石を投じていると思うわけです。

 

 

 7年近く鉄道業界で働いていた経験(非正規ですけど)もあるので、今回は元鉄道業従事者の視点からも含め、災害時の計画運休の意義について書いていこうと思います。

 

 

 

計画運休とはなにか

計画運休について

 

計画運休というのは事前に把握できる災害において、各鉄道会社が当日の運行本数をあらかじめ減らしたり、または運休させることを言います。

 

事前に把握できる災害としては台風や大雪が挙げられます。各鉄道会社はそれぞれの沿線エリアの当日の天気予報の情報を収集し、運行計画を決めます。

 

予報の正確さや台風・雪の規模の大きさにも依りますが、平均として前日や2~3日前から告知を始めます。

 

告知方法は各社のHPやアプリを介しての告知、または駅構内での急告板やポスター、駅構内や車内での放送などがあります。

 

計画運休の歴史はとても浅い

 

計画運休という言葉を最近になってよく耳にすることが多いと思います。

なぜなら、大都市圏において計画運休が始まったのはつい最近になってからだからです。

 

いち早くこの計画運休を始めたのはJR西日本

4年前の2015年に台風19号が関西地方に接近した際、初めてこの計画運休を発表しています。

 

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最初は計画運休の告知タイミングや、利用客への計画の周知などがうまくいかない部分もあり、問題が発生することも少なくなかったようですが、徐々にこういった問題点も改善されていき、その後の災害時に活かされています。

 

これを参考に首都圏ではJR東日本が去年9月30日に台風24号が日本列島を縦断した際、初めて大規模な計画運休を発表することになります。

 

 

www.nikkei.com

 

これもまた、周知の不十分さや告知が直前になるなどで課題が残る形になります。

 

そして今回、大規模な計画運休がまた行われることになりました。

正確には降雪時に計画運休が行われた鉄道会社もありますが、今回の最強クラスの台風の接近による私鉄含めほぼ全ての鉄道会社が計画運休を発表したのは2回目か、もしくは初めてのことかもしれません。

 

計画運休の目的

 

計画運休の目的は大きく言えば利用客の安全を確保すること。

 

よくニュースで取り上げられる予期せぬ倒木や架線断線による長時間運転見合わせとありますが、あれは予期されている危険性です。

 

ゲリラ豪雨による被害予想がつきにくい災害に比べても、台風は進路と規模で何日も前から被害の予想が付きます。そこにはもちろん強風による倒木や線路支障・架線支障(線路内や架線に障害物が入りこむこと)架線断線は想定内です。

 

運行時にそれらの要因により突然運転を見合わせる事になれば長時間車内に閉じ込められる危険性もあります。最悪の場合、走行している車両の目の前での倒木や線路支障が発生し脱線することも考えられます。先日起きた京急線での脱線事故を見ればその被害と社会的影響は甚大です。

 

計画運休というのはこうした想定される重大事故に備えた事前の予防策なのです。

 

なぜ計画運休は普及したのか

計画運休の普及は以下の3つの理由が大きいと考えます。

 

①災害対策への関心の高まり

②告知ツールの拡大と普及

③異常気象の増加

 

①災害対策への関心の高まり

これは2011年に起きた東日本大震災により、人々の災害への関心が一層高まったことです。特に首都圏ではほぼ全ての鉄道会社が当日夜の運行を見合わせ、多くの帰宅難民者を出し、社会問題になりました。

 

以来鉄道会社はいかに帰宅困難者を出さないようにするかの対策に追われ、災害時の駅員の行動マニュアルや災害時備蓄品の管理強化などを行いました。

 

そうした中で、予期出来る災害に関しては事前に運行計画を告知することで、早めに帰宅させたり、当日の出勤をやめさせるなどの行動を促そうとさせたのです。

 

②告知ツールの拡大と普及

非常に多くの鉄道利用者がいる日本の大都市圏において、計画運休を実施をするためには全ての人に迅速に正確な情報を伝える必要があります。

 

従来は駅構内での急告板や放送がメインでした。テレビニュースで運行状況を伝えてはいましたが、情報に時差があり必ずしも正確ではありませんでした。

 

そんな中、スマホの普及とともに各鉄道会社が運行情報などをリアルタイムで伝えるアプリを提供するようになり、非常に多くの人に正確な情報が簡単に伝えられるようになりました。

 

SNSが果たす役割も大きいですね。

 

こうしたアプリの普及により、計画運休をどう告知するかの課題が解決されたことも理由の一つです。

 

③異常気象の増加

温暖化により、強い台風がその勢力を保ったまま日本に上陸する事が大きくなりました。

 

そのことにより想定される被害も大きくなり、従来の規定値を超えてから運転を取りやめるという運転基準では防ぎきれないアクシデントも発生していきました。

 

 

計画運休が与えた新たな問題とは

計画運休は利用客の安全を最優先に考えた結果生まれた方法であり、想定されるアクシデントに備えるという意味で非常に効果のあるものです。しかし、この計画運休により新たな問題も浮き彫りになりました。

 

それは計画運休の欠点や課題というよりも、人や企業の災害時の行動基準です。

 

計画運休の知っててなお駅へ向かう大勢の人

各鉄道会社が計画運休を発表したのにも関わらず、当日は多くの出勤利用客で駅構内がぐちゃぐちゃになるという現象が発生します。

 

台風が去って、もうこれ以上は大きな被害は発生しないだろうと予測して駅に向かうわけですね。

 

しかし、台風というのは過ぎ去ったら即運転再開というようにはいかないわけです。

線路内や駅構内の点検があり、異常箇所があればその復旧にかかる時間を要します。

 

倒木や架線断線のような重大事項が発生した場合は1時間2時間での復旧はかなり困難です。

 

もし安全に支障がなく運転を再開したとしても当初の計画通り、運行本数は通常の半分以下ということは十分考えられ、相当な所要時間がかかります。

 

それでもなお、多くの人は駅に向かいます。

 

駅で足止めを喰らうことや、いつもよりもさらに混んでいる電車に長時間乗ることが簡単に予想できるのにそれでもなお会社に向かいます。日本人にとっては当たり前のことでも海外の人たちから見るととても奇妙に映ります。

 

ただ、この行動の要因は日本人の働くことに対する考え方のほかに、企業の災害時の対応にもあります。

 

なんとしてでも出社しろと言わんばかりの企業

ブラック企業に対する認知もだいぶ高まってきているので、さすがに台風時でも「かならず定刻通り出社しろ」という鬼畜企業はほとんどないと願っていますが、それでもなるべく早く出社してくださいと連絡したり、そういった雰囲気を醸し出させる企業は多く存在します。

 

こういった企業の災害時の姿勢が駅前の入場規制や振り替え輸送の為の凄まじく長い行列を生むわけです。

 

本当にどうしてもその日にやらないといけない事がある場合を除き、こういった計画運休が発表されている時は休みにする、もしくは午後出社や早期退社を積極的に勧めるような考え方に変わるべきです。

 

※どうしても出社しないといけない場合の企業側の対応

医療・警察・消防・電力・交通インフラなど、職務上どうしても出社しなければならない場合、企業や役所は近場の宿を提供したり柔軟な勤務シフトを組むなどをしっかりする必要があります。またこういった状況でイレギュラーなシフトになった場合の手当や代休の提供も必要不可欠だと思っています。

 

わいが働いていた鉄道会社では臨時スタッフが駅に宿泊したり、本社の人間が最寄の駅で臨時駅スタッフとして対応にあたっていました。

 

その際の手当も充実しており、とても働きやすい職場だと感じました。

 

元鉄道スタッフの視点から見た災害時の計画運休

少し本題からずれますが、この計画運休を元鉄道員の視点から書いていこうと思います。これによりより深い理解が得られるとともに、計画運休の際の行動基準の参考にしてもらえればと思います。

 

鉄道員から見た計画運休

最初に紹介した通り、計画運休は首都圏ではまだ去年あたりから始まったばかりで、その際の現場の駅員の作業基準も近年大きく変化しました。

 

わいも今年の1月までは働いており、7年間の鉄道員生活の中で災害時の対応の大きな変化を感じています。

 

そして計画運休には成果があるということも駅員視点から分かってきます。

帰宅難民者が明らかに減ったこと、駅に来て状況を知り慌てふためく人が減ったこと、倒木などのリスク発生時に利用者が長時間閉じ込められるといったリスクが無くなったことなどです。

 

計画運休時は何をやっているの?

まずは事前告知です。

駅員がやることは急告板の作成と掲示、そして放送です。

計画運休を知らせる紙は事務所内、時刻表、柱などなど至る所に貼られます。

 

放送に関しても利用客が乗降で改札を通るタイミングで何度も放送します。車内でも同様です。

 

そして当日は運輸指令所からの運行計画に基づき正確な情報を適時放送します。

また、他社線の状況も把握しながら振替輸送の案内をします。

 

深夜終電相当の電車運行が終わった際も各駅員が交代交代で駅施設の点検や周辺の線路状況を目視で確認し、始発の電車が動き出す時間が近づく頃には各駅の状況を再度確認し、運輸指令所に報告します。

 

人によっては徹夜ですし、交代で担当するにしても睡眠時間は3時間も無いことがほとんどです。

 

こうして朝の出勤ラッシュ時には入場規制がかかるような状況の中で大きな混乱が起こらないよう(まあ入場規制の時点で混乱なんだが)誘導したり、随時運行状況や運行計画を放送し、可能であれば他社線への案内を行います。

 

よくある質問集

ここでは駅でよくある質問に答えます。もちろん鉄道会社によっては対応も規則も異なりますのでご了承ください。


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Q.いつ運転再開?通常運行に戻る?

計画運休の場合、随時今後の運行計画については更新され告知していきます。

ここでの〇時再開予定というのはあくまで予定であり、確定事項ではありません。特に前日にこういった時刻は告知されますが、その後の倒木などのアクシデントにより伸びることは余裕であり得ます。

 

各アクシデント毎に場合分けした運転再開予定時刻など掲出出来るわけがないので、一般的に台風が沿線エリアを去る時間や雨量風量予測に基づいて決定されます。

 

でも正直駅員はウェザーリポーターではないので正確な運転再開時刻を明言することはありません。

 

Q他社線への振替輸送をやっていない時があるのはなぜ

他社線も計画運休をしている場合があります。というか振替が出来るほど近くを運行している路線であれば同じく計画運休をしている可能性が濃厚です。

 

他社線も運転見合わせ、もしくは大幅に本数を少なくして運行している場合、そちらに誘導しても意味がほとんどないわけです。

 

振替輸送は自社線が運転見合わせや大幅遅延をした際に対象の運行区間を他社線に依頼をし、他社線の経路を利用することによって目的地に向かってもらうための利用者補償措置です。

 

複数の鉄道会社が計画運休をするような事態では、他社線も同じ状況で依頼が困難になり、利用者補償がなされない為、振替輸送を行わないことがあります。

 

駅員からすれば安易に他社線に誘導することは輸送障害の責任を他社線に押し付けることになります。加えて計画運休の場合はもし振替輸送が出来てもすさまじく時間がかかるし、凄まじく混雑しているという地獄状態です。

 

Q運休なんて聞いてないぞ

目を向けてください、耳を傾けてください、関心を持ってください。

 

ぜっったいに告知してます。

 

最近はこういった類の意見はめったに聞かなくなりましたがまだたまにいます。

事務所内には多くの利用者がいますが、他の人は何も言いません。

 

なぜなら知っているから。

 

計画運休をどの鉄道会社も採用し始めてきた今、迫りくる災害時には自分が利用する鉄道会社の運行計画に関心を持ってください。

 

計画運休は働く人の行動基準になるべきだ

計画運休に込められたメッセージ

 

計画運休に込められたメッセージは「事前に運行を止めるほどの災害が刻一刻と迫ってきているんだよ」というものです。

 

まあもっともっっと意訳すると「家に居ろ」ですが、それでは本当に外出を必要としている人がいるので、ちょっと角が立つわけです。

 

計画運休は人や企業が災害時の行動を決める一つの判断基準を提供しているのです。

その判断基準に逆らって無理に仕事に向かうことは無謀だし、非効率的なんですよ。

 

利用客の寛容さも必要

もちろん想定されていた被害が予想よりもしょぼかったという「空振り」が発生するかもしれません。

 

しかし、こういった「空振り」を許容できる寛容さが必要になります。

 

 

計画運休の導入は働き方改革の一つ

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計画運休が利用客や企業の行動基準を変える働きをいている。

 

これによって、企業はこのような際の従業員に対する対応を変えていくことになります。鉄道会社の告知に合わせて事前に社員に当日の出勤可否を正確に伝えることが出来ますし、部分休暇や災害休暇の導入を促進させることになるでしょう。

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※台風休暇という考え方

台湾やアメリカでは台風休暇というものがあり、自治体が学校や会社を休みにすることが出来るというものです。この台風休暇の導入によって例えば「取引先相手が今日も出勤しているから自分も出勤せざるを得ない」というような状況を無くすことが出来ます。

 

これによって交通機関の乱れも軽減されるほか、災害時のテレワーク導入の促進も期待さます。

 

わいはこの台風休暇を導入すべきだと思っています。

 

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利用客は同時に、無理矢理出勤することを控える事で駅構内や車内で抱えるストレスを無くせるほか、無駄にした時間を効率よく過ごすことができます。また、出勤時に起こるリスク(風で飛んできたものにあたってケガしたとか)も無くせます。

 

こうして人と企業の働き方に対する考え方がまた一つ大きく変わることになるのです。

 

 

今はまだ計画運休が始まって間もないので、色々な問題があり、それに対処するための策を考えている段階だと思います。しかし、将来的にはこの計画運休の導入が働き方改革の一つのきっかけになったと言われる日が来ると思います。

 

災害が起こるたびに駅やSNSが荒れるような状況が早くなくなると良いですね。